「子ども・青少年フォーラム Kinder - und Jugendforum」ミュンヘン市

ミニ・ミュンヘンで「都市の仕組み」を学んだ子どもたちは、
いったいどのような形で「本物のまち」と関わっていくのでしょうか?

ミュンヘン市の「こども・青少年フォーラム」

「こども・青少年フォーラムKinder - und Jugendforum」は、ミニ・ミュンヘンと同じKultur & Spielraum e.V.(NPO文化と遊び空間)がミュンヘン市役所から委託を受けて、1989年から行われている事業です。
これは、9〜16才くらいまでの子どもたちが「身の回りの環境をこう改善したい!」という提案を行うもので、年に2回、春と秋にミュンヘン市議会本会議場で開催されます。参加した子どもたちの議論と多数決で提案が可決されると、同席している市役所と市議会の各党の担当者が決められ、1年以内にその提案を実施しなければならないという仕組みで、毎回10数事業の提案があり、8割程度が可決されます。
(なお、「子ども・青少年フォーラム」には、前述した市全体で行うミュンヘン市「子ども・青少年フォーラム」とミュンヘン市の25の地域で行われる地域子ども・青少年フォーラムの二種類あります。※ここでは市全体のものを取り上げています。)

ミュンヘン市の「こども・青少年フォーラム」

提案は子どもたちによる自主的なもので、学校や公園、あるいは通学路周辺に関するものが多くなっています。提案のきっかけとして、NPOが毎回10の学校、合計20クラスに出前授業を行い、学校周辺のまち歩きをして、問題を発見しながら提案づくりの指導を行っています。
出前授業のテーマは、①学校、②交通、③遊び場、④エコ・リサイクルの4つあり、もちろん最終的にフォーラムに提案するかどうかは、子どもたちの自主判断になります。実際の提案内容は、「学校のトイレが汚い」、「学校の水道水を飲みたいがまずい」という身近な意見から、「学校のそばの道路でうさぎが轢かれたので、横断歩道を作ってほしい」、「一方通行の道を、自転車には両方通行にしてほしい」、「公園にスケボーランプを作ってほしい」という比較的小さな提案、さらに「子どもの交通料金を安くしてほしい」、「電気自動車を増やすべき」、「ミュンヘン市の建物はすべて太陽熱と地熱を利用すべき」という大きな提案まで様々です。子どもたちに可決された提案は、半年後のフォーラムでその事業の進捗状況が報告されます。模擬都市ミニ・ミュンヘンで都市の仕組みを学んだ子どもたちが、毎日暮らす実際のまちで感じたさまざまな問題を解決するための提案事業として、大変興味深い取り組みです。

このプログラムのポイント

子ども参画のプロフェッショナル: 子ども参画専門員(Kinderbeauftrage)の役割
ミュンヘン市の「子ども参画専門員」は、子どもの参画を進めるための専門職で、市の様々な施策において子どもの参画を促す役割を担うとても重要なポジションです。フォーラムでは、開催のための予算確保やスケジュールの組み立て、フォーラムで提案に関わりそうな関係機関や政治家などへ参加を打診することに加え、フォーラムで採択された動議を事業化し、実現するための調整等を行っています。
子どもたちの意見を引き出すモデレータ
「子ども・青少年フォーラム」では、全てのプログラムの司会を担当するモデレータ(進行役)がいます。 モデレータは、子どもの言いたいことが何かをわかってもらうために、子どもの言葉を大人の言葉へ翻訳し、このテーマに関する政治家や行政、関係機関の方に伝えます。また恥ずかしがり屋の子ども、もじもじして言えない子どもが、恥ずかしいという気持ちを克服して自分の気持ちを言えるように、モデレータの意見を押し付けてしまうのを注意しながら、うまくモチベーションを与える役目を担っています。これはなかなか難しいことです。このようにモデレータは、普通の司会以上の役割を担う重要な人物です。
大人に求められる役割と責任
フォーラム当日、子どもたちからどのような提案が出てくるのか、フォーラムが始まるまで大人たちは誰も知りません。例えば、事前に大人たちに内容が知らされ、子どもたちの要望や質問に対して回答を準備しておくようなことは、決してしないのです。提案が可決されると、提案した子どもと行政機関等担当者との間で契約が結ばれ、大人たちは責任をもって提案の実現化に取り組まなければなりません。その進捗状況は、半年後の次のフォーラムで報告されますから、大人たちの真摯な対応が求められます。 とはいえ、実行が難しいものについては、子どもの参画専門員が預かり、子どもたちの要望にできる限り近付けるよう、関係機関と調整します。